いつも私たちのソバに
寒さが日に日に厳しくなってきましたが、これから年末にかけてぜひ味わいたいのが新そばです。新そばは、9~11月にかけて収穫された秋そばの新物をいい、つるつるっとした食感と旨味、香りが魅力です。
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日本のそばの歴史は古く、5世紀頃から栽培され、実をそのまま食べるそば米、そば粉をお湯で練ったそばがきとして長い間食べられてきました。そばと聞いて私たちが想像する細長い麺の状態のそば切りとして食べられるようになったのは、江戸時代中期だといわれています。比較的やせた土地でも育ちやすく、収穫までの期間も短いため、食料不足を救う頼れる存在だったようです。
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そんなそばですが、江戸時代からはだんだんと縁起物として食べられるようになっていきます。大晦日に、細く長く幸せに暮らせますようにとの願いを込めて年越しそばを食べる風習は、日本人なら誰もが知っていますね。もう一つ、引っ越しそばといって、引っ越し先の近所にそばを配る風習があります。始まりは町人文化と言われ、それまでは小豆を使った粥やおもちを配っていたそうですが、手軽で安価なそばが主流になっていきました。「おそばに引っ越しました」という意味もありますが、安くておいしいものを、というのが本当のところだったようです。
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栄養面ではエネルギーの代謝を活発にし、疲労回復効果があるビタミンB1、肌荒れや口内炎を予防し、脂肪の燃焼をサポートするビタミンB2などのビタミンB群や、腸内環境を整える食物せんいも豊富です。
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また、そばに含まれるルチンはビタミンPとも呼ばれ、ポリフェノールと同様の働きをします。抗酸化作用に加え、毛細血管を丈夫にし、血液の流れをよくするので、高血圧や脳卒中などの生活習慣病の予防効果が期待できます。韃靼(だったん)そばにはとくに豊富で、ルチンの含有量は普通のそばのなんと100倍!黄色く、ほんのり苦味がある韃靼そばですが、栄養の豊富さから注目が集まっています。
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そばの栄養成分の多くは水溶性なので、一部は水に溶け出てしまいます。そこで注目したいのが、そば湯です。そば湯はそばのゆで汁のことで、色は白く、とろみがあります。そのまま飲んだり、食べ終わったあとのそばつゆに足して、好みで薬味を入れていただきます。そば湯には体を温める効果があり、ルチンやたんぱく質などの栄養成分が溶け出ているので、生そばをゆでて食べる機会があればそば湯もぜひ飲んでみましょう。乾麺やゆで麺のゆで汁は塩分も含まれており、そば湯にはなりませんのでご注意ください。
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そばを食べる際に気を付けたいのが、塩分です。麺そのものには含まれませんが、つゆには約4gの塩分が含まれます。ザルそばやつけそばで食べる場合には、つゆに浸すのは麺の半分位の気持ちで。その方がそばの香りも一層楽しめます。かけそばの場合も、つゆには塩分が多く含まれているため、飲み切らない方がいいでしょう。定番のねぎやわさびに加え、みょうがや青じそ、ゆずなど季節の薬味を一緒に食べると、風味が増して満足感もアップし、減塩にもつながるのでおすすめです。
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当病院のある広島県北広島町の豊平地区でも、そば作りが盛んに行われており、9月には白くてかわいらしいそばの花畑を町のあちこちで見かけます。芸北地区の八幡高原では、高嶺ルビーという品種のそばが栽培されていますが、なんとこのそばの花は白ではなく濃いピンク色!9月中旬~下旬にかけて見頃を迎えます。まさにルビー色のじゅうたんのような花畑は一見の価値ありです。11月中旬には毎年そばまつりが開催され、採れたて打ちたてのおいしい新そばを食べることができます。機会があればぜひ足を運んで、北広島町産の新そばを味わってみてください。
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古くから私たち日本人の生活に寄り添ってきたそば。これからもその味と歴史、そして食文化を、細く長く大切にしていきたいものです。